殻割り(CPU) とは?
CPUに接着剤で取り付けられているヒートスプレッダーを、万力やナイフカッターなどの工具を用いて無理矢理取り外し、熱伝導率の高いグリスや液体金属を自分で塗り直して、再びヒートスプレッダーを接着するという改造行為。CPUの冷却性能を飛躍的に向上させられるテクニックである。
Intel製CPUが2012年に発売された「Ivy Bride世代」に移行してから、コスト削減のためCPU本体のコア部分とヒートスプレッダーの隙間をうめる熱伝導素材が質の悪いシリコングリスになったため、従来と比べてCPUの冷却性能が大きく低下する問題が発生し、さかんに行われるようになった。
CPUの冷却性能を大幅に高めることで、OC(オーバークロック)耐性を向上させられるメリットがあり、オーバークロッカー(オーバークロックを好んで行う人)と呼ばれる一部の自作PCユーザーの間で流行した。「ある程度以上のオーバークロックは殻割りなしでは不可能」とも言われる。
ヒートスプレッダー内部の熱伝導材を交換するのが目的だが、CPU本体からヒートスプレッダーを強引に剥がし取る必要があるため、言うまでもなくこれを行うとメーカー保証はなくなる上に、CPU基盤を破損してパソコンが起動しなくなるリスクを伴うので、通常はやってはいけない。
ヒートスプレッダーとCPU本体の基盤は強力な接着剤で貼り付けられており、簡単には剥がれないため、万力を使って力ずくで接着を断ち切ったり、カッターナイフで丁寧に接着剤を削り取る方法が一般的。Amazonなど一部ではCPU殻割り専用の工具も販売されている。
無事にCPUからヒートスプレッダーを外し取ることが出来たら、アルコールやエレクトロニッククリーナーを使って元々ついていたグリスをきれいに拭き取り、自分で購入した熱伝導率の高いグリスや液体金属を適量塗布して、再び接着剤でヒートスプレッダーをCPU基板に固定する。
殻割りを行うメリットとしては、CPU内部の熱伝導効率が大幅に向上するためCPU本体の効率的な冷却が可能になり、オーバークロックによってCPU性能を最大限まで発揮させられるようになるほか、通常使用時でも消費電力が低下したり冷却ファンの騒音を抑えられる点があげられる。
ハイリスクを伴う改造ではあるが、特にIntelのCeleronシリーズなどオーバークロック耐性の高い安価なCPUなどでは殻割りによって大幅なオーバークロックが可能となり、全く別物のCPUと言えるほど処理性能を向上させることもできるので、パフォーマンス面でのリターンは大きい。