CPUクーラーの性能には寿命がある!経年劣化するので半永久的には使えません!

自作PC 約5分で読めます 投稿 2023/09/27 更新 2023/09/30

CPUクーラーの性能には寿命がある!経年劣化するので半永久的には使えません!

「CPUクーラー」という言葉は、普通のPCユーザーにとっては、もしかするとあまり聞き馴染みのない言葉かもしれません。一方で自作PCユーザーだったり、趣味でPCパーツの交換などを楽しんでいる人にとっては、当たり前に知っている言葉でしょう。

CPUというのはパソコンの部品の中でも、PCを使用する上でのほとんど全ての計算処理を担う、いわばパソコンの心臓部ともいえる最も重要なパーツですが、これがPCを構成する部品の中では特に電気食いが激しいパーツでもあり、それに伴い発熱の最も大きいパーツでもあります。

これを冷却して安全な温度に保つことで発火事故を防いだり、CPU本来の性能を維持するための冷却装置がCPUクーラーです。そう、パソコンに負荷を与えると「ブーン…!」という不快な音を立てて冷却ファンをうならせているアレですね!

ところで、そんなCPUクーラーですが、ぱっと見では単なる表面積の大きい金属の塊にファンを取り付けただけの簡単な装置に見えて、実は半永久的に使えるものではなく、寿命があるって知っていますか?自作PCユーザーの方でも、意外と知らずに安いときに購入して、予備に買い置きしている人も多いのではないでしょうか?

CPUクーラーの寿命はヒートパイプの寿命とほとんど同じ

まず前提として、CPUクーラーと言ってもここでは空冷のCPUクーラーに限った話になります。世の中には水冷のCPUクーラーというのもありますが、水冷を使っているのは自作PCユーザーの中でも一部に限られるので、世の中のほとんどの人にとって水冷クーラーとは無縁だからです。

CPUクーラーをパーツごとに分解してみると、大きくヒートシンク・ヒートパイプ・冷却ファンの3つの要素に分けられます。この中でヒートシンクは単なる表面積の大きい金属の塊に過ぎないので、早々に劣化することは考えにくいですし、冷却ファンについて言えばモーターが壊れたらそれが寿命ということは簡単に分かると思います。

意外と知られていないことですが、実はこの中で最も劣化しやすい(=経年や継続的な使用により本来の性能を失いやすい)のが、ヒートパイプなんです。

ヒートパイプの素材には、金属の中でも銀の次に熱を伝えやすい性質のある銅が使われていることが多いのは、自作PCユーザーならばよく知っていると思いますし、その赤っぽい色を見たらわかると思いますが、あれって実は単なる銅の棒ではないのです。

ヒートパイプの断面

上の写真のようにヒートパイプの中は空洞になっていて、内側にはちょうど人間の臓器の小腸のようなひだのある構造になっており、ツルッとした外側よりも大きな表面積を持ちます。

この中にはごく微量の液体(ほぼ純水)が入っていて、量にすると数滴以下。さらに空洞の中には空気は一切入っていない真空に近い状態になっていて、そこに水だけが入っているような構造です。

このちょっと変わった構造こそが、ヒートパイプがCPUの熱を瞬時にヒートシンク部分に伝える秘密になっていて、この真空状態と内部の水の量のバランスが失われると、効率よく熱を伝えるヒートパイプとしての機能を果たせなくなってしまう。すなわち寿命を迎えることになります。

ヒートパイプが劣化するとどうなるのか

このようなちょっと変わった構造のヒートパイプがなぜ効率よく瞬時に熱を伝えることができるのか?ということについては、ここでは本格的な説明をすると記事が無駄に長くなるのでさらっと流すことにしましょう。

簡単に言えば、重力によりヒートパイプの下部に溜まった液体の水が、CPUからの熱を受けて、揮発する(=水蒸気になる)ことで、熱を奪いながら瞬時にヒートパイプ上部へ移動します。上部へ移動した水蒸気はヒートシンクにより冷却され、気体である水蒸気から液体の水へと変化し、ヒートパイプ内部に結露します。

液体の水になってヒートパイプ内側のひだ構造に結露した水は、重力と表面張力により瞬時にヒートパイプ下部に押し戻され、それが再びCPUからの熱を受けることで水蒸気になり熱を奪いながらヒートパイプ上部に移動する…。

このサイクルを延々と繰り返すことで、ヒートパイプからヒートシンク部分に素早く熱が伝えられて、効率的にCPUを冷却する構造になっているのがCPUクーラーなのです。

これだけでは何を言っているのかよく分からない人が大半かと思いますが、実用の上では仕組みまで詳しく知る必要はないので、この場では詳しい説明は省きます。興味のある方はぜひグーグルで検索して調べてみてください。

このヒートパイプの伝熱効率がどれほどすごいかと言うと、たとえばライターやガスバーナーでヒートパイプを数秒間ほどあぶったとしても、そこを素手で触れるくらい瞬時にヒートシンク部分に熱を逃がしてくれます。

ただし、劣化により本来の性能を失ったヒートパイプで同じことをやると、素手で触るとヤケドするくらい熱くなってしまいます。これは喩えではなく、実際にそうなるんです。

本来の性能を維持している状態のヒートパイプと、劣化してしまったヒートパイプでは、大げさではなくそれほどに性能差があるのです。そう聞くと、使い古したCPUクーラーが冷却能力を大幅に失って寿命を迎えてしまうという話も、スッと腑に落ちるのではないでしょうか。

ヒートパイプはなぜ劣化するのか

では、密閉されているはずのヒートパイプ内部の真空状態や水の量のバランスが失われてしまう(=ヒートパイプの劣化が起こる)のはなぜなのか?という疑問が当然のように起こるかと思いますが、これは原子レベル分子レベルで見ると、どうしても微細な隙間があるからでしょう。

人間の目には見えないわずかな隙間があれば、そこから真空状態の内部に空気が入り込みますし、CPUにより熱されて水蒸気になったヒートパイプ内部の水分は、気体なので液体の状態よりも抜けやすくなります。

このような微細な隙間を完全にふさいで、まったく空気が入り込んだり水分の抜け出す余地のない完璧なヒートパイプを製造するのは、技術的にもコスト的にもなかなか難しいのでしょうね。

なので、CPUクーラーのヒートパイプというものは、使わずに保管しているだけでも新品の状態と比べると性能は落ちていきますし、使えばパイプ内部の水がどうしても失われやすくなるので、より早く劣化すると考えてよいでしょう。

ヒートパイプが新品と同じ性能を保てるのは、だいたい1年くらいと言われています。それ以降はゆっくりですが、時間をかけて徐々に劣化していき、数年が経つ頃には冷却効率の低下が顕著に現れるようになってきます。

そうなるとCPUが熱を持つようになって、ひどい場合にはサーマルスロットリングが発生し、CPU本来の性能を引き出せなくなります。最悪の場合には100℃を超えるような高温になって、安全装置が働いてパソコンを強制シャットダウンすることもあります。

もしあなたのパソコンが、以前よりも発熱がひどくなってCPUの処理がもたつくようになったと感じているとしたら、それはひょっとしたらCPUクーラーの劣化で冷却能力が落ちてきたことが原因かもしれません。買い換えを検討してみましょう。

ヒートパイプを持たないCPUクーラーは寿命が長い

さて、ここまではCPUクーラーの中でも特にヒートパイプを持つ本格的なものについてのみ焦点を当てて話してきましたが、一方でヒートパイプを持たない簡易的なCPUクーラーというのも存在します。

というよりも、もしかするとオフィスなどで使われている小型のデスクトップ型パソコンでは、ヒートパイプを持たない簡易的なCPUクーラーが搭載されていることの方が多いかもしれません。もしかすると、こっちの方がメジャーかもしれませんね。

いわゆる「リテールクーラー」と呼ばれている、インテルやAMDのCPUを購入するとオマケでついてくる小型のCPUクーラーがそれに当たります。DELLなどの小型のメーカー製デスクトップPCにも、それと同じようなCPUクーラーが搭載されていることが多いです。

このような、ヒートシンク部分に冷却ファンを乗っけただけの簡易的な構造のCPUクーラーは、劣化しやすい部品であるヒートパイプを持たないので、当然ですが寿命が長いというメリットがあります。

この場合、ヒートシンクはただの表面積の大きい金属の塊に過ぎないので数年やそこらの運用で機能を失ってしまうことは考えにくく、実質的には冷却ファンのモーターの寿命がそのCPUクーラーの寿命と考えていいでしょう。

冷却ファンには回転部分があるとは言え、ヒートパイプよりもずっと寿命が長いので、ヒートパイプを持つCPUクーラーに比べて経年や継続使用による劣化が起こりにくく、長きにわたって本来の性能を維持できるというわけです。

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