同じCPUでも性能に個体差があるのはなぜ?CPUに当たり外れがある理由とは
自作PC
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投稿 2023/10/09
更新 2023/10/09
自作PCやPCのパーツ交換をやっていると、同じ型番のCPUを用いて全く同じ構成のパソコンを作り、同じ処理をやらせたとしても、CPUの性能に個体差があることに気づきます。特に発熱具合やオーバークロック耐性において差が出やすいようです。
本来ならば同じグレードのCPUならば全く同じ性能でなければならないのですが、実際のところCPUには個体によって当たり外れがあり、あるCPUでは動画エンコードのような重い処理を行っても70℃までしか発熱しないのに、同じ型番の別のCPUでは80℃近くまで発熱するようなことが往々にしてあります。
最近のCPUは昔と比べて十分に性能が高くなってきたことで、個体差について言及されることも少なくなってきたように思いますが、そもそも精密機器であり厳密に設計されているはずのCPUに決して小さくはない個体差が生じるのは何故なのか、今回はそんなところに触れていきたいと思います。
- この記事の目次(もくじ) -
CPUの個体差は製造工程での品質のバラつきが原因
はじめに結論から言ってしまうと、CPUの性能に個体差が生じる原因は、製造工程における品質のバラつきにあるようです。CPUの製造は近年ではプロセスルールがナノミリメートル(nm)単位と超微細化されていて、正確で緻密な作業工程の連続であり、ほんのわずかなズレが品質の差につながる世界です。
もっと身近でわかりやすいものに喩えてみると、3Dプリンターを想像してみてください。3Dプリンターの使用経験がある人ならよく知っていることですが、同じ設定で印刷を行っても毎回全く同じ物体を製造できるわけではありません。
うまく印刷できることもあれば、失敗することもあります。そこには様々な要因があり、台座が水平からほんのわずかに傾いていたり、原料のフィラメントがなぜか微妙に詰まって上手く出てこなかったりと、ちょっとしたことで結果を大きく左右しますし、もっと言えば室内温度など条件も常に同じではありません。
たとえがやや極端で適切ではないかもしれませんが、3Dプリンターでさえ小さな条件の違いで毎回同じものが作れるわけではないのですから、ナノミリメートルというもはや原子の大きさと比較できるレベルの緻密さで製造しているCPUですから、どれほど厳密な作業をしても完璧に毎回同じ結果を得るというのが大変難しいことは容易に想像がつきます。
そもそもCPUの原料となるシリコンウェハーの品質が常に全く同じではありません。ウェハー表面の平坦性にわずかな不均一性があったり、不純物が少し混ざっているだけでも結晶構造に違いが生じます。ウェハーの品質は出来上がったCPUの性能に直結するため、ウェハーの製造過程でごくわずかな品質のバラつきが生じる時点でCPUの性能も変わってきます。
CPUの製造では、光学的な露光装置を用いて原料となるシリコンウェハー上に微細な回路を形成していきます。言ってみればレーザーを鉛筆のように用いて回路を描いていくようなイメージです。このとき、ウェハーの品質差を含め様々な要因で回路パターンが正確に形成されないことがあり、それがCPUの性能差につながるようです。
CPUメーカーのIntelやAMDでもこの個体差を認識していて、上手く製造できた優良個体とそうでない個体の差が大きい場合は電圧を調整して別グレードのCPUとして販売されることがあります。これらは結果的に違う型番のCPUとして出荷されることになりますが、型番は違っても実際のところ同じ工程で製造された選別品だったりする訳です。
そういう理由もあって、同時期に発売されるCPUでもラインナップがハイエンドからローエンドまで様々あるわけですが、品質の個体差が一定の範囲内に収まっていれば同じ型番のCPUとして出荷されることになるので、どうしても当たり外れの個体差があるものの、あくまでメーカーの品質管理の基準では同じグレードとして扱われるということですね
CPU個体差の当たり外れを見分ける方法はない!すべては運次第
とは言え、PCユーザー全体の割合の中で見れば、同じ型番のCPUの品質の個体差など気にする人は非常に少ないと思いますし、そもそも品質差があること自体をほとんどの人は知らないでしょう。けれども、オーバークロックを楽しむような凝った自作PCユーザーならどうしても気になるところではありますよね。
どうせ同じ金額を出して買うなら、せっかくなら品質の良い当たり個体のCPUを手に入れたいと思うわけですが、残念ながら一般ユーザーが当たり外れを見抜く方法はありません。確実に見抜くにはCPUメーカーに就職して製造工程の情報を得るとか、メーカーの中の人の情報筋から当たり個体の出荷ロットを教えてもらうとかになります。
そうした情報が事前に2ちゃんねる(5ちゃんねる)などに出回ったり、多くの購入者の声から当たり出荷ロットを推測することが出来れば、品質の良い個体を引く確率を高めることはできるかもしれませんが、自分から積極的に情報収集に努めるのも大変なことなので労力に見合うかどうか微妙です。
たまたま当たりの出荷ロットの情報を得られるのでれば良いですが、基本的にはCPUを買ってみて発熱が少なかったりやオーバークロック耐性が高ければラッキーくらいに考えるのが良いでしょう。
最近のCPUは昔と違ってオーバークロックなどせずとも十分に性能が高いので、そもそもCPUの個体差の存在を知っていたとしても気にするユーザーは少ないようです。筆者の場合は欲しいCPUがある時はあまり気にせずに購入して、もし同じ型番のCPUを複数購入する機会があれば性能差を比べてみるような楽しみ方をしています。