メモリーにヒートシンクって本当に必要?冷却効果はあるの?

自作PC 約4分で読めます 投稿 2019/10/18 更新 2019/10/25

メモリーにヒートシンクって本当に必要?冷却効果はあるの?

最近ではPC周辺機器メーカー各社から、特に自作のゲーミングPC向けブランドの商品を中心に、ヒートシンク付きのメインメモリーが販売されることが多くなってきました。昔はどこのメーカーもRAMにヒートシンクなんか付いていなかったのに、そもそも必要なんでしょうか?

また、メモリー用のヒートシンクが単体で販売されているケースも見られます。薄い金属板状のヒートスプレッダーに近いようなものから、表面積を多く取るために凹凸形状になった本格的なものまで様々ありますが、取り付けることでどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

ヒートシンクって何?

ヒートシンクというのは、パソコンの部品から発した熱を放熱するために取り付けられている部品のことで、通常は熱が伝わりやすく尚且つ冷却されやすいよう金属でできています。熱を持った部分が空気に接する表面積を大きくすることで、パソコンの部品から出た熱を効率的に排出する役割を持っています。

よく知られているのはCPUクーラーです。CPUから発せられた熱を、いったん金属製のヒートシンクに伝えることでCPU本体から逃がしてやり、さらにファンで冷却しパソコン筐体の外部に熱を押し出すことで、CPU温度の上昇を防ぐという、とても大切なパーツになります。

ハードウェアに詳しくない人にとっては、排熱が重要といわれてもあまりピンとこないかもしれませんが、パソコンの冷却装置は金魚の水槽で言うところの濾過装置のようなもので、システムが安定して動く状態を維持するためにはどうしても必要な機構です。

CPUにヒートシンクが正しく設置されていない場合、CPU温度はあっという間に100度に達して、安全装置が働いて自動的に処理速度を大きく落としたり停止してしまいます。CPUの性能を正常に発揮させるためにも、火災などの事故防止のためにも、CPUのヒートシンクは正しく設置することが不可欠なパーツなのです。

メインメモリーはそれほど発熱しないので本来ヒートシンクは不要

薄い金属板状のヒートシンク付きメモリー

ところが、最近はメインメモリー(主記憶装置)にもこうした金属製のヒートシンクが取り付けられている製品が一部メーカーから販売されています。メモリに取り付けられてセットで販売されていることもあれば、単体でも数百円程度で販売されているので、自分の使っているメモリーに装着することができます。

多くのメモリーにはヒートシンクなど付属しておらず、実際、メインメモリーにヒートシンクなど基本的には必要ありません。そもそもメモリ自体、それほど熱を持つパーツではないからです。CPUやGPUのように手で触れたら火傷するほど発熱はせず、普通はヒートシンクが必要になるほど高熱にはなりません。

CPUなどは強い熱を発して、高熱になればなるほど安全装置が働いて動作クロック周波数を自動的に落とす仕組みになっているため、温度が上がりすぎると処理速度が落ちてしまうという実用上の問題があり、積極的な冷却が必要ですが、メモリーの場合は、普通に使っている限りでは動作クロック周波数が落ちるほど高熱になることはありません。

では、何のために一部メモリーにヒートシンクなんか付いているかと言うと、メーカーロゴをあしらった金属プレートでメモリのチップを隠すことで単に見栄えを良くしたり、他社製メモリとの外観上の差別化をはかるため…という”飾り”としての意味が強いようです。加えて多少の冷却効果も期待できるので、ないよりは合った方が良い…という程度でしょう。

実際に、しばらくの間稼働しているパソコンからヒートシンク付きのメモリー取り外してヒートシンク部分に触れてみると、手で直接触れても火傷しない程度には、それなりに熱を持っていることがわかります。つまりヒートシンクがメモリ本体から熱を吸収しているということなので、必要かどうかはさておき、一定の冷却効果はあるのかもしれません。

メモリーのヒートシンクは邪魔?かえって逆効果の場合も

凹凸のある本格的なタイプのヒートシンク付きメモリー

ある調査によると、ヒートシンクを装着して冷却ファンの風を当てると、装着していないときに比べて温度が下がる傾向にあるそうです。ただし、一方でヒートシンクが付いていることで通気性が悪くなり、ファンの風を当てていない場合はかえって熱を持つという、全くの逆効果を示す調査結果もあります。いずれにしても大した冷却効果はなさそうです。

また、メモリーにヒートシンクが付いているとマザーボードによってはスペース的に余裕がなく、用意されたスロット分のメモリーを装着できないという物理的な問題が起こることもあります。せっかくヒートシンク付きを買ったのに自分のパソコンには使えなかった…なんて場合も珍しくないので注意が必要です。

それでもあえてメモリーにヒートシンクがあった方が良い場面を考えるとすれば、メインメモリーをオーバークロックする場合くらいでしょう。メモリーをオーバークロックして動作クロック周波数を上げてやると、数値上ではメモリーの処理速度を高速化することができる一方、発熱も大きくなります。

そのため、オーバークロック対応の製品には、ヒートシンクが付属しているメモリーが多いようです。ヒートシンクが付属していないメモリーをオーバークロックして動作させたい場合は、別途ヒートシンクを購入して取り付けるのが良いと言う自作PCユーザーもいます。

ただし、一般的にはメモリーをオーバークロックしたところで、CPUをオーバークロックしたときのような体感できるほどの性能差はほとんどないと言われていますし、普通にPCを使っている限りではそんなことをする必要はありません。もっと言えば、オーバークロックしたところでヒートシンクが必要なほど発熱するか?と言うと、そうでもありません。

メモリーの寿命はとても長く、耐久性の気遣いはしなくてよい

ほかにメモリーにヒートシンクを付けるメリットを考えるとすれば、付けていない場合に比べて少しだけ熱の影響を排除できるとすると、メモリの製品寿命が多少なりとも延びる可能性があることくらいでしょうか。パソコンのパーツは厳密に言えば全て消耗品なので、一度購入すれば永久に使えるということはなく、どれもいつかは寿命が来るからです。

そうは言っても、メインメモリーはパソコンのパーツの中でも非常に耐久性が高く、普通に使っている限りではハードディスクのように1年や2年で次々壊れるようなものではありません。通常使用での理論上の寿命は数億年と言われることさえあり、ほとんど半永久的です。なので耐久性について神経質になる必要はありません。

またヒートシンク装着時と非装着時でメインメモリーの故障率を比較した有用な統計データも見たことがありませんし、そもそも大した発熱でもないので、ちょっとくらい冷却したところで長期的に見て故障率に影響を与えるほどの違いがあるかどうかもはっきりしません。

メモリーの故障率や耐久性など気にせず、多少乱雑に扱っても壊れたという話はあまり聞きませんし、先述のようにメモリーは非常に寿命の長いパーツなので、壊れるより先に新しい規格の製品が一般化して、今使っているメモリーが使い物にならないほど陳腐化し役割を終える可能性の方が高そうです。

結局のところ、メモリーにヒートシンクを取り付けるのは、ほとんど自己満足や気休めの部分が大きいので、わざわざ高い費用を出してまでヒートシンク付きのメモリーを選ぶ必要はないと筆者は考えています。実用上は、ヒートシンクが付いていても大してメリットもデメリットもありません。ただのデザインだったり飾り程度に考えるのが良いでしょう。

ちなみに、あえてメモリが故障するシーンを考えるとすれば、電源ユニットの故障の巻き添えを食らう場合です。一般にPCの電源ユニットは少なくとも10年くらいは持つように設計されていますが、万一故障した際は、その巻き添えを食らう形でメモリーにも一時的に非常に高い電圧がかかるなどして、物理的に壊れることがあります。

というわけで、メモリーの発熱による耐久性や故障率を気にするくらいなら、その分ちょっとでも電源ユニットなど他のパーツの故障に気をつける方が生産的かもしれません。世の中にはメモリーにヒートシンクの必要性を主張するウェブサイトも存在しますが、書いているのは大抵はヒートシンク付きメモリーを売りたいだけの業者だったりするので注意が必要です。

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