iBasso Audioのハイレゾ対応な超高音質DAP「HDP-R10」レビュー!

買ったものレビュー (イヤホン・ヘッドホン・オーディオ) 約7分で読めます 投稿 2012/09/23 更新 2021/12/18

iBasso Audioのハイレゾ対応な超高音質DAP「HDP-R10」レビュー!

今回は、超高音質で話題のiBasso Audio製デジタルオーディオプレイヤー「HDP-R10」を購入してみました。もともとは2012年春に発売予定だったのが延期となり先日8月の末にやっと発売されたばかり。中国メーカーながら小売価格は8万8千円と、iPodやウォークマンなど一般的なDAPと比較するとべらぼうな値段が付いています。

その内容はプレイヤー本体と5万円クラスのDAC内蔵ヘッドホンアンプが一体になったような作りで、これ1台でアンプを持ち歩く煩わしさから解放されるだけでなく、さらにはCDの音質(16bit/44.1kHz)を超えるハイレゾ音源(24bit/192kHzまで対応)も再生可能とあって、オーディオファンに馬鹿ウケしているようです。

そんなわけで予想以上の人気で発売当初から品薄状態が続いており、何しろこの価格ですからもともと供給台数が少なく、製造も部品の調達がままならないようで、現在は一時的に出荷停止の状態にありしばらくは価格の高騰が続きそうですが、今回試聴もせずにとさっさと購入してきたので、早速レビュー行ってみたいと思います!

これが「HDP-R10」の化粧箱。20cm四方、高さは10cm以上とDAPの箱にしてはかなりの大きさ。また写真ではボール紙に見えますが、実はプラスチック製でかなり気合いの入った化粧箱となっています。

箱を開けてみると「HDP-R10」が豪華に鎮座しています。ゼンハイザーのフラグシップヘッドホン「HD800」を彷彿とさせる演出です(HD800のレビューはこちら)。

箱はこのように二段構造になっていて、下の段にUSBケーブルと充電ケーブル、取扱説明書が入っていました。ちなみに保証書は箱の側面に貼り付けられています。

プレイヤー本体はかなりごつい筐体になっており、厚みはおおよそiPhone二段分くらいあります。液晶には「iBasso Audio」のプリントが入った保護シートが貼られていました。

というわけで、保護シートはプリントが邪魔なのではがしてしまいました。プリントがなければそのままシートを貼った状態でも使えそうだったわけですが、代わりにメーカーから専用保護シートが発売されています。

背面にはヘアライン加工されたアルミが貼られていますが、筐体の大部分はプラスチックなので、全体としてあまり金属っぽい質感や高級感はありません。あくまで中華プレイヤーの範疇ということで。

ヘッドホンの接続端子は6.3mm標準ステレオプラグ、3.5mmミニプラグのほかラインアウトまで付いています。一番右側はゲイン調整スイッチで、Lo・Mid・Hiの3段階で調整が可能。

反対側には、充電ケーブル接続端子やMicro USB端子のほかオプティカル端子、コアキシャル端子というデジタル出力のインターフェースまで備わっていて、まさにフル装備という感じです。

側面には音量調整ボタンとmicroSDカードの挿入口。反対側の側面には電源ボタンが付いています。ボタンのクリック感は中華プレイヤーにしてはなかなか良好です。

ちなみに、仕様では使用可能なmicroSDは32GB SDHCまでとなっていますが、FAT32でフォーマットすれば64GB SDXCもいけるらしいので、合わせて買ってみました(使い方はこちら)。

早速電源を入れてみると、バイブレーションが動いて「iBasso Audio」のロゴが浮かび上がりました!何のためにバイブレーション機能が備え付けられているのかは、ちょっと意味不明ですが。

これがホーム画面。音楽再生アプリ「HD Music Player」のウィジェットが表示されています。プリインストールされているアプリはブラウザやAndroidマーケットなど最低限のものだけ。

ホーム画面が立ち上がってからしばらく立つと自動でメディアスキャンが始まります。スキャン数秒で終わりますが、これが完了する前に操作するとフリーズしたりと色々と厄介です。

というわけで、音楽を取り込んでみました。一部の特殊文字が文字化けすることがあるようですが、フォントが中国っぽいとかそういうことはなかったので良かったです。ちなみに全曲FLACでタグ付け等はこちらこちらの方法を使って取り込んだので、よかったら参考にしてください。

さて期待の音質についてですが、実際に音を出してみて強く印象に残っているのは、何を差し置いても、これなら8万8千円という価格も決してボッタクリではないとすぐに納得できたことに対する安堵感です(いくら前評判がよくても、何しろ価格が価格ですから自分の耳で聴いてみないことには不安は払拭できません)。

一聴して感じられたのが、今までメインのDAPとして使ってきたS-Master MX搭載のウォークマンNW-A860(レビューはこちら)とはまるで次元が違う解像度の高さと音抜けの良さで、数万円クラスの高品質なDAC内蔵ポータブルヘッドホンアンプにデジタル接続したのと極めて近い音を聴いている感触を得られました。

例しに手持ちのDAC内蔵ポータブルヘッドホンアンプのiQube V2(レビューはこちら)を引っ張り出して、PCにUSB接続しデジタル出力で音楽を再生し耳に当ててみる。もう一度、HDP-R10を手に取り聴いてみる。最後にiPodを取り出しiQube V2にアナログ接続してみる。

すると、流石にデジタル接続したiQube V2の音に比べると残響感のリアルさや音の立体感などでHDP-R10に分が悪いことが判るものの、アナログ接続したiPod+iQube V2の音質に対してはHDP-R10が比較にならないほど圧倒していることがはっきりと感じ取れました。

ちなみに、手持ちのアンプであるiQube V2は数あるDAC内蔵ポータブルヘッドホンアンプの中でも最高峰の音質として知られていますが、現状ではウォークマンはもとよりiPodにデジタル接続することはできません(つまり、デジタル接続したiQube V2の音を”ポータブル”と言える環境で持ち出すことは難しい)。

iPodにデジタル接続できるDAC内蔵ポータブルヘッドホンアンプとしては「HP-P1」「HPA-1」などが有名ですが、HDP-R10の音質は、これらと肩を並べるレベルを実現しているわけであり、10万円以内で実現可能な”ポータブル”と呼べるオーディオ環境としては、ほぼ限界に近い域に達していると言うことができます。

もちろん、プレイヤーとアンプが1つの筐体に収まっている分だけHDP-R10の方が圧倒的に取り回しが良く、その上ハイレゾ音源にも対応していることから、現状では最高の選択肢と言っても過言ではないでしょう。とりあえず、HDP-R10が期待通りもしくはそれ以上の音質だったことにホッとしているのが今の心境です。

音の傾向としては、今で使っていたウォークマンが明るいにぎやかな音だったのに対して、それに比べるとHDP-R10はずいぶんフラットで落ち着いた音。低域から高域までまんべんなく鳴らしてくれるので、見方によっては、例えばロック系のサウンドではベースやドラムの音が強調されてボーカルが前に出ず引っ込んでいるように感じます。

ただし、情報量ではHDP-R10が圧倒的なので、録音されているサウンドの細かいディティールまで鳴らしきることができるという意味ではどんなジャンルの曲にも向いていると言えます。一方で臨場感などを求めている人にはウォークマンの方が聴きやすいという人も少なくないと思うので、評価が分かれるところでしょう。

この辺りは使用するヘッドホンによっても感じ方が違ってきそうですが、しばらくHDP-R10を使った後、改めてウォークマンを聴いてみると、確かにポータブルオーディオとしては十分に高いレベルではあるものの、何だか芯がなくてスカスカな”なんちゃって高音質”みたいな音に感じてしまいました。

音楽再生について音質面以外で気に入った点としては、ホワイトノイズの量が予想外に少なかったこと。さすがにiPod直挿しに比べるとやや多いようですが、S-Master MX搭載モデルのウォークマン(ウォークマンのラインナップの中では最もホワイトノイズ量が少ない)よりも少なかったのは驚きです。

体感的には、「ウォークマン(A860などS-Master MX搭載モデル)>HDP-R10>iPod」という感じで、インピーダンスが30Ωくらいある普通のヘッドホンなら全く聴き取れないレベルにまで減退が可能。静寂の中からスッと音楽だけが立ち上がってクリアな音だけがストレートに耳に入ってくるのは爽快です。

一方で、音楽再生に特化したこの機種の最大の欠点とも言えるのが、液晶画面が消灯する際に”ブツッ”というかなり大きい音のポップノイズが入ること。この症状は多くのレビューサイトや2chなどでも多数報告があがっていますが、本当に鼓膜を刺激しすぎて耳を痛めるくらいのレベルのノイズなのでかなり不快です。

個体によっても品質にかなりのばらつきがあるようで、筆者のものは音楽停止中に電源ボタンを押して手動で画面を消灯したときだけノイズが入りますが、多くの人が音楽再生中に画面が自動スリープした際に毎回ノイズが入り、ひどいものではノイズの発生と共に音楽まで勝手に停止される症状が頻発している人もいるようです。

ちなみに、筆者は2週間ほど使用して、上記の「自動スリープの際にノイズが入り音楽の再生が止まってしまう」という症状を一度だけ経験しましたが、以降は同様の症状は全く出ていませんし、音楽再生中なら自動スリープしてもノイズが入ることは一切ないので、かなり当たりが良かったのだろうと思います。

中には、このノイズがひどくヘッドホンとの間にアッテネータ(抵抗器)をはさんで使っている人もいるようですが、確かにあのノイズが音楽再生中に毎回入るとなると、そこまでしたくなる気持ちは分かります。このようなお粗末さは、やはりキワモノ中華プレイヤーの域を出ていないので購入の際はある程度覚悟が必要かもしれません。

Androidやプレイヤーの操作性については他の多くのブログやレビューサイトでも詳しく言及されているので、ここではサラッと流しますが、一言で言えば、タッチパネルの操作が何をやっても指先の動きよりもワンテンポ遅れる感じでお世辞にも快適とは言えませんが、致命的な欠陥はなく最低限のラインはクリアしています。

これはコスト面からCPUの処理能力など音楽再生と関係のない機能を削っているからだろうと考えられますが、そもそもAndroidをOSとして採用しているのもソフトウェア開発に時間やコストがかさむことのリスクを抑えるためであり、音楽を聴く以外の使い方が想定されている製品ではありません。

基本的に、見た目の質感・ハードウェア性能・ソフトウェアの完成度、どれを見ても音楽再生には支障のない部分でケチれるところは徹底的にケチったような仕様ですし、しばらく使っていると操作中に色々なエラーが多発することもわかってくるので、音楽再生以外の機能にも期待している人には購入はお勧めしません。

そのほか気になった点としては、タッチパネルと液晶の隙間にホコリが入ってしまいやすいので神経質な人には気になりそうですし、バッテリーの残量表示もかなり適当だったり、何もしていないのに突然フリーズして全く動かなくなったりと、細かいところを見ていけば枚挙にいとまがありません。

個人的に一抹の不安を感じているのが、内蔵バッテリーが小型でパワフルながら取り扱いが難しく発火の危険なども高いと言われているリチウムポリマー充電電池ですし、充電中に本体がかなり熱くなります。何しろ爆発がお家芸の中国製なので、いつ突然発火するか知れないと思うと心配です…(冗談でなく)。

とまあ欠点を見ていくとキリがないわけですが、個人的には8万8千円は決して安い買い物とは言えないものの音質については大満足していますし、ポータブル環境でこれだけの音質を実現しようと思うと、普通ならプレイヤーとDAC内蔵アンプを2段重ねにして持ち歩かなければならないところです。

見た目は普通のDAPに比べるとかなりごつくなっていますが、電車の中など公衆の場で見せびらかして使うつもりもないので、プレイヤーとアンプが1つの筐体に収まってこの大きさなら十分に許容範囲です。操作性の悪さなどを差し引いても、それを十分にカバーできるだけの音を出してくれるので、買って本当に良かったと思っています。

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