澪ホンで有名なAKGのオープンエアー型ヘッドホン「K701」レビュー!

買ったものレビュー (イヤホン・ヘッドホン・オーディオ) 約7分で読めます 投稿 2019/12/30 更新 2020/01/01

澪ホンで有名なAKGのオープンエアー型ヘッドホン「K701」レビュー!

今回レビューするのは、オーストリアの音響メーカーAKGの、かつてフラグシップだったオープンエアー型ヘッドホン「K701」です。2005年の発売で、当初は10万円近い高級モデルだったこのヘッドホンですが、2009年頃アニメの『けいおん!』で登場人物が使っていたことで人気に火が付いて”澪ホン”として有名になったのを覚えている人も多いのではないでしょうか。

それとは関係なしにオーディオ界では発売当初から大人気のロングセラーモデルで、その後も本機をベースにした後継機がAKGからいくつも発売されています。一方でこのオリジナルの「K701」も製造地をオーストリアから中国に移してひっそりと生産は続けられており、今なら1万円台とかなり購入しやすい価格になっています。

というわけで、実は筆者が実際にこのヘッドホンを購入したのは今から4年ほど前の2015年頃なのですが、当時の購入価格は1万6000円ほどだったと記憶しています。このタイミングでレビューを書くのも今更感があるのですが、数年使ってみて十分にエージングもできていて本機の音の特徴みたいなものもじっくり聴き込むことができたので、自分なりの感想を書いておきたいと思います。

箱はこんな感じで、一応それなりに高級機っぽい演出になっています。筆者が購入したのは2015年なので、時期的には生産地はオーストリア製ではなく中国製です。

デザインはいかにもヘッドホンらしくて好きです。AKGから出ている本機の後継モデルと比べても、個人的にはこの「K701」の色が1番好きかもしれません。後継機でなくオリジナルの本機を選んだのもそういう理由です。

こちらはスタンドになっていて、「K701」を立てられます。ただ、シルバーの金属っぽい部分はプラスチックに塗装してあるだけで、硬めのスポンジに穴が開いているだけの簡単なもので、実物は写真で見るより安っぽいのです。

一応こんな風にスタンドにヘッドホンを立てることができます。ガラスケースの棚にでも入れて飾っておくなら、こういうのを使っても良いと思いますが、私は普段はヘッドホン掛けに置いているので出番はありません。

イヤーパッドのクッションはちょうどいい硬さです。直径のサイズもクッションの分厚さも、たいていの人は耳に干渉せずすっぽり覆える程度のちょうどいい大きさなので、何時間装着していても全く痛くなりません。

ドライバーユニットはメッシュの布で覆われていますが、しばらく使わないとここに埃がたまったりします。黒で埃が目立ちやすいので定期的に掃除しています。

ヘッドバンドの上部にはAKGのロゴがあしらわれています。素材は合皮のようなつるっとした感触。ちなみにオーストリアで生産していた頃の初期型とは素材が変更されているそうです。

生産地がオーストリアだった頃の本ヘッドホンは、ヘッドバンドの内側に滑り止めのための凹凸があって、頭に当たると痛くて長時間付けていられないと不評だったのですが、筆者が購入した時期のものはコブは取り払われてます。

ジャックは6.3mm標準ステレオプラグ。ちなみに本機種「K701」は後継機種と違ってリケーブルはできないものの、4芯ケーブルが採用されているため、プラグ交換だけでバランス接続化できるというメリットがあります。

ヘッドバンド部のアジャスターのゴム紐は、何年も使っているとこのように伸びて元に戻らなくなってしまいます。この仕様は残念ながらAKGの後継機種のモデルでも同じのようです。

ヘッドバンドを上まで持ち上げると、ゴム紐はこんな感じになります。実際に頭に装着するときには、これでも別に実用上の問題はないので、気にせず使っています。これは装着する人の頭の大きさもよるかもしれません。

というわけで、こんな風に長年使っているとちょっとした問題もでてくる「K701」ですが、特筆すべきなのはやはりコストパフォーマンスの良さでしょう。もともとAKGのオープンエアー型ヘッドホンの中ではフラグシップ機として2005年に発売され、当時は8~9万円ほどが相場だったのが、今では1万円台半ばで買えてしまうわけです。

ヘッドホンの進化など発売から15年近く経った現在でも技術的には以前と比べて大きな違いがあるわけでもない分野なので、現在では値段を考えるとかなりおすすめできます。昔のようにヘッドバンドのコブが痛くて長時間付けていられないなんて問題もなくなっているので、かなり使いやすくなっていると思います。

ちなみに、アニメ『けいおん!』で登場人物の秋山澪がこのヘッドホンを使っていて、”澪ホン”なんて呼ばれてバカ売れしていた当時は、秋葉原の家電量販店でも8万円くらいしていました。それももう10年も前になるわけですが、特にオーディオ好きというわけでなくても、当時あのアニメが好きだった人になら、1万円台で買えるコストパフォーマンスを考えると余裕でおすすめできます。

ただ、これくらいの価格帯のヘッドホンになると、普通は室内でヘッドホンアンプにつないで音楽を聴く使い方を前提としているものなので、ジャックがスマホやウォークマンなどの3.5mmミニプラグではなく、6.3mm標準ステレオプラグになっています。なので、そのままでは3.5mmミニプラグ端子に挿せないわけですが、本機は一応付属品として3.5mmミニプラグへの変換アダプターも付いているので、ウォークマンやスマホ直挿しでも使えます。

インピーダンスも62Ωと極端に高いわけではないので、直挿しで音量も十分とれます。アンプなしの直挿しでこのクラスのヘッドホンを十分にドライブできるかどうかはオーディオマニアの人からは賛否がありそう(というか、据え置きアンプなしはあり得ないという意見を押し付けたがる人もいる)ですが、筆者は自宅ではアンプにつないで使うこともあれば、ウォークマン直差しで使うこともあります。

それでも音自体はそれなりにきちんと出てくれているので、カジュアルに使う分にはアンプ必須などということは全くないと思います。もちろんアンプを使わないよりは使う方が良いのは言うまでもありませんが、高価な据え置きのアンプを導入したからと言って、オーディオマニアでない一般の人が考えるほど、劇的な変化があるわけではありません。特別なこだわりがなければ直挿しで良いと思います。

肝心の音質については、これはもう私が今更書くほどのことでもないのですが、この「K701」という機種がヘッドホン界のスタンダードなモデルとしての地位を得ている現在では、音の解像度・音場の広がり・高域~低域のバランスのよさなど、どれを見てもそれなりにレベルが高く「普通に良い」ということに尽きると思います。

私はヘッドホンについては10万円を超えるような超高級機も複数持っていて、過去にも色々とレビューを書いています。詳しくは当ブログの「買ったものレビュー (イヤホン・ヘッドホン)」のカテゴリーを見ていただければいいと思いますが、同じオープンエアー型ではゼンハイザーの「HD800」など有名な高級機種も今までに聴き込んでいます。

ゼンハイザーの超高級ヘッドホン(16万円)「HD800」レビュー!

さすがに「HD800」などと比べてしまうと、そちらの方が音質的な意味ではどこを見てもワンランク上のヘッドホンになるので、本機「K701」は分が悪いですが、オープンエアー型として解像度のレベルは十分に高いですし、音場の広がりも無駄に広すぎず狭すぎず心地良い感じで聴かせてくれて、バランス的にもフラットできれいな澄みきった音を出してくれます。

ただし、音のバランスはやや高域寄りという人もいますが、これはオープンエアー型ヘッドホンに共通する特徴で、そもそも構造的に低域よりも高域の方が得意としているので、本機「K701」も低域よりはどちらかと言うと中域~高域をきれいに鳴らしてくれますが、低域も十分に出ていて、物足りないと感じたことは全くありません。

そもそも「フラットな音」と言っても、何か基準や定義があるわけではないので、どんな音をフラットと呼ぶかは人によって違いがあるかもしれませんが、特に低域よりでも高域よりでも中域よりでもなく全体をバランスよく鳴らしてくれるという意味で、個人的にはこのヘッドホンの音のバランスの傾向はフラットと言って良いのではないかと考えています。

なので、クラシックのような中高域のレベルの高い音が求められるジャンルの音楽はもちろん向いていますし、ジャズでもポップでもロックでもアニソンでも何でもいけます。これよりも迫力のある低域を求めている人は、ゼンハイザーの「HD650」など低域に特徴的な音作りをしているメーカーの製品を選ぶか、密閉型を検討するべきでしょう。

また、本機はあくまで音楽を楽しむためのヘッドホンであって、原音のディテールを正確に再現するような「音を聴く」ためのヘッドホンではありません。よって、解像度などもめちゃくちゃ高いわけではなく、心地よく音楽を聴くための十分なレベルという意味で、個人的にはかなり好きな音作りです。とにかく音楽を聴いていて楽しいということに尽きます。

加えて、個人的には装着感の良さがとても気に入っていて、長時間付けていてもまったく痛くなりません。ヘッドバンドのコブあり時代のモデルは試したことがないのですが、コブがなくなっている現在の「K701」の付け心地は文句なしです。重量もそれほど重いわけではなく、この大きさなのに長時間付けていると首が疲れるなんてこともないのは有り難いです。

ただ、筆者は頭の大きさがどちらかと言うと小さい方なので、大きめの方にとってはやや側圧が強いと感じる場合もあるかもしれないので、できれば購入前に家電量販店などで試聴できる環境があればベストでしょう。イヤーパッドのクッションについては、ちょうどいい硬さと十分な大きさなので、普通の耳の大きさであれば干渉して痛くなることはないはずです。

また先述の通り、私はこの「K701」よりも上の価格帯のオープンエアー型ヘッドホンも持っているのですが、十分な音質のレベルの高さや装着感の良さから、このヘッドホンが自分が持っているオープンエアー型の中では一番気に入っていて、現在はメインで使っているヘッドホンになっています。10万を超える超高級機のように、カジュアルに音楽を聴くのには無駄なほどのレベルの高さの音でもないので、気軽に使えてちょうど良いんですよね。

というわけなので、現在は1万円台半ばで入手できることや、全体的にバランスがよく心地の良い音質、使い勝手の良さなどを総合的に考えると、現在販売されている数あるオープンエアー型ヘッドホンの中でも「コストパフォーマンスお化け」と言っても良いのではないかと思います。今までオープンエアー型の本格的なヘッドホンを試したことがない人にとっても、入門機種として性能的にも価格的にもちょうど良い機種で本当におすすめです。

良いことばかり書いても不自然なので、最後に欠点をあげておくとすれば、やはりゴム紐の問題です。これはAKGのオープンエアー型ヘッドホンに共通することですが、写真に載せたようにアジャスターのゴム紐は長年使っていると経年劣化で伸びてビロビロになってしまうことです。もはや仕様みたいなものですし、実用上はそれほど問題もないので個人的には諦めてそのまま使っています。

ただし、どうしても気になる人は、非公式ですが一応ハウジングを分解してゴム紐だけ交換することもできるようです。ここでは詳しいやり方は割愛しますが、ググったらやり方を解説しているブログが見つかります。ちょっと面倒な作業になるようなので、今のところはやってみようとは思っていません。

あと、これも多くの人にたびたび指摘されていることですが、このヘッドホンを装着した姿を鏡で確認すると、宇宙人みたいで笑えます。これは本当にダサい。AKGのオープンエアー型ヘッドホンの最大の欠点かもしれません…。まあ普通は室内で使うためのオープンエアー型ヘッドホンなので、着けている姿を見られるとしたら家族くらいなので、別に問題ないでしょう。コスパの良さのトレードオフだと思って、我慢しましょう。

なお、現在のこのヘッドホンは日本においては2019年より型番を変えて再販売されています。従来は一部の業者が並行輸入していたものが、ひっそりと取り扱われていたのですが、現在は日本の正規輸入代理店であるヒビノが独自に3年保証をつけて「K701-Y3」として正式にカタログモデルとしてラインナップしているので、さらに購入しやすい状況にあります。

ただし、現在のAKGは韓国のサムスン電子傘下の企業になっているため、今後もいつまで生産が続くかは不透明な状況にあります。なので、もしこの記事を読んで「K701」を欲しいと思った方がいれば、早めに買っておくのが吉かもしれません。ちなみに従来通りの並行輸入モデルの「K701」もまだ一部では販売されていて、そちらは3年保証はつきませんが国内代理店を通していない分だけ安く入手できますよ。

このページの先頭へ